公開日 2017年01月31日
本学の内尾祐司医学部教授を中心とする研究チーム(健康長寿社会を創出するための医工農連携プロジェクト・骨格系グループ)は、折れた骨を固定するためのスクリュー(ネジ)に患者本人の骨(自家骨)を使用するという新しい骨折治療法を開発、実用化を目指している。 この治療法の開発は、本学医学部整形外科と総合理工学部材料プロテス工学科の連携技術によるもので、医工連携の成功例として注目を浴びている。
本研究チームが開発した新しい骨折治療法とは、手術中に患者自身の骨をピーナッツ大の大きさに取り出し、それを手術室の中で骨スクリュー(骨ネジ)に形成し、骨折部分に差し込んで止めるというもの。 自家骨スクリューは、数ヶ月後には、周囲と同質の骨に変わるため、患者に合わせたテーラーメイドの治療が可能である。また、この治療法は、従来の金属スクリューによる治療と比べ、拒絶反応やネジ抜き取りの再手術がないなどのメリットが挙げられるほか、世界で最先端を担っていた生体適合材料スクリューでも果たせなかった完全な生体適合が期待できる。 これまでに5例の臨床試験を成功させており、各症例とも術後経過は良好で、合併症も無く順調に回復している。
また、現在、実用化に向けての取り組みとして、骨スクリューの表面をプラズマ装置で加工することで、より密着度が高く再生能力が優れたすぐになじむ骨スクリューの開発にも取り組んでおり(地域新生コンソーシアム研究事業)、本研究チームは、これらにより産学連携の研究拠点形成、ベンチャー企業の設立を目指している。
【従来の骨折治療法と新骨折治療法の比較】
従来の骨折治療法 | 新骨折治療法 | ||
ネジ素材 | 金属 | 生態吸収性素材 | 患者自身の骨 |
強度 | 強い | 弱い | 強い (手術後強度増加) |
ネジ抜き取りの 再手術 |
あり | なし *吸収される。しかし、骨には置換せず |
なし (生きた骨に置換) |
拒絶反応 | あり | あり | なし |
その他 | 医療費抑制につながる (再手術、材料費を必要としないため) |
【健康長寿社会を創出するための医工農連携プロジェクト・骨格系:骨折の治療サブグループ】
内尾 祐司(医学部・教授)
森 隆治(医学部・准教授)
中井 毅尚(総合理工学部・准教授)
*導入研究の際には、大谷忠総合理工学部助教授(現茨城大学・准教授)にも重要な働きをしていただきました。