平成17年度の研究成果

 本プロジェクトは、地元地域産の天然素材を用いた病室の内装の改装を行い、その効果を実証するものである。これまでの研究成果は、以下のとおりである。

.病室の内装に用いる木材、特に島根県産のスギ材について、調湿機能の評価を行った。その結果、スギ材は、サクラ材やコナラ材などと比較して、高い湿度調節機能を有することが明らかとなった(図1)。 スギ材は、珪藻土や漆喰といった調湿機能の高い内装材料と比較しても、同等かそれ以上の湿度調節機能を有することが確かめられた(図2)。

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. 今回新たな試みとして、稲藁を主な原料とする出雲和紙を壁紙として用い、その調湿機能や化学物質吸着能を実験室的方法で評価した。 その結果、和紙は、湿度調節機能を有することが確かめられ、さらに、和紙を2重に重ねて用いることで湿度調節機能を高めることができることがわかった(図3)。 また、和紙は、その吸着能により、室内空気中のホルムアルデヒドや気体アンモニアの濃度を低減させることが確かめられた(図4)。

.本研究において、実際に病室に木材と和紙を用いた改装を施し、その効果を未改装の部屋との比較により、検証した。 その結果、改装した病室は、未改装の部屋と比較して、1日の湿度変化の幅が小さく抑えられていたことがわかった(図5)。

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.実際の病室に被検者による心理アンケートを行った。その結果、心理的因子の比較において、改装した部屋の方が「有機的な」「自然な」「安心感のある」「親しみやすい」「落ち着いた」「軽やかな」などがあり、好意的、肯定的に感じている。 内装の変化によって印象が大きく変わることがわかった(図6)。

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図6:A室(未改装の部屋)入室後と
B室(改装した部屋)入室後の心理因子の変化