平成17年度の研究成果

1.絵図のデジタル化の完成

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 産官学の共同研究として、石見銀山と松江(一部)の絵図のデジタル化を行なった。 大型絵図を分割撮影した後、画像合成を行い、画像ソフトZOOMAを使用して、パソコン上で絵図の拡大・縮小が可能となった。 調査成果の一部は、11月の附属図書館での絵図展で展示した。明治期地籍図のデジタル化は全国でもほとんど行われていない。 今後デジタル史料を共同利用し、研究が進められる。
  写真:絵図のデジタル展示(附属図書館)


2.絵図の解読、記載内容の分析の成果

 これまでの分析の結果、明治期の地籍図が、明治初期の銀山の状況を示す重要な史料であることが分かってきた。 土地利用をみると、荒市街・荒田・荒畑などの記載があり、明治初期には銀山が衰退に向かっていることが分かった。 その一方で現在は人家が少ない銀山地区には、依然として市街地が連続していることも注目される。 さらに寺院・墓地・地名など詳細に記されていることから、かつての銀山繁栄の様子を窺うことができ、今後現地調査により、研究を深める予定である。

3.古文書調査の成果

 石見銀山では、江戸時代後期の大森地区の屋敷の配列が記されている史料の所在が明らかになった。 今回デジタル化した史料とのつきあわせにより、江戸時代後期から明治初期の大森地区の景観が復原可能となる。 今年度地元の石見銀山資料館などと連携し、研究を進める予定である。さらに代官所の御用商人であった熊谷家の史料調査の結果、熊谷家が所有する屋敷を記した史料も見つかったので、今後の研究で活用を検討している。
 松江では、白潟地区で江戸時代後期の屋敷絵図や近代の写真が確認された。 さらに雲南市吉田町の田部家の史料に、白潟地区の鉄問屋の記載が多数見つかった。今後絵図の調査と並行して、関連資料の発掘、分析を続ける予定である。

4.調査成果の公開、利活用についての成果

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 昨年秋の附属図書館開催の絵図展で、調査成果の一部を公開した。調査成果の公開については、画像ソフトZOOMAを活用し、大画面のプロジェクターで絵図を映し、直接画面に触れることで、絵図を拡大・縮小することが可能となった。また、産官学共同で、マルチメディアテーブルのコンテンツとして、「松江歴史マップ」の改訂版を作成し、絵図展で展示した。本プロジェクトの成果の一部もおさめることができた。こうしたデジタルコンテンツ化の成果は、特に学生から反応があり、今後キャンパス・ミュージアムや大学での教育・研究に活用することができると考えられる。絵図展では、絵図に関する講演会もあわせて実施し、成果の一部をプロジェクトメンバーが発表したところ、学内外から160名もの参加があった。研究成果の一部は、教育でも活用され、学生が、絵図の解読・分析・成果発表を、絵図展の際に行った。

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学生による説明会