強相関電子系物質の新奇な超伝導機構の解明

概要

 電気抵抗が突然ゼロになるという超伝導現象の研究は,その発見以来約100年を経過し,基礎および応用両面からますます発展を続けている。最も重要なパラメータである超伝導転移温度(TC)は未だ低温に留まっているものの,超伝導マグネットを用いたリニアモーターカーや医療機器であるMRI(磁気共鳴画像診断)等に応用されている。本プロジェクトでは,超高圧下においてミクロ,マクロ両観点から最近注目されている超伝導体の物性測定を遂行し,理論的考察を加えることにより,新奇な超伝導メカニズムを解明することを目標としている。新たな超伝導機構が存在することが明らかになれば、全く新しい超伝導物質開発の道を拓くことが期待される。また,多彩な実験手段を備えた高圧物性拠点の地位を確立し,世界レベルの研究成果の地方からの発信を目指している。
     

 

研究内容

 重い電子系CeCu2Si2の高圧相の実験から,電荷揺らぎを引力機構とする超伝導の可能性が初めて指摘され非常に注目されている。また,パイロクロア酸化物Cd2Re2O7では,高圧下で構造相転移と超伝導が密接に関係していることが明らかになっている。さらに,βパイロクロア酸化物KOs2O6では,Kイオンのオフセンター振動(ラトリング)が顕著に出現し,このラトリングと超伝導が密接に関係していることが報告されている。
 このように,電荷や構造の揺らぎと超伝導の新奇な相関現象が相次いで発見されている。最近になって鉄元素を含む高温超伝導物質が発見され,その圧力下での超伝導機構に非常に注目が集まっている。
 本プロジェクトでは,高圧下において,ミクロな観点から電荷揺らぎや静的な電荷状態(電荷秩序を含む)を敏感に測定可能なNMR/NQR測定を,マクロな観点から帯磁率,電気抵抗,熱測定を遂行し,理論的に正しい超伝導機構を確立することを目指している。

研究成果の活用と展望

  1. 高圧物性実験は非常に困難な技術開発が要求されるものの,大型施設を必要としない点に特徴がある。したがって,特徴ある技術開発や比較的安価な研究設備の整備により,地方大学からも世界レベルの研究が可能であり,高圧研究拠点としての地位の確立を目指している。
  2. 著名雑誌への成果公表(JPSJ, PRL, Science, 等)を行い,大型外部資金の獲得を目指している。プロジェクトメンバーの科研費の獲得や,新学術領域研究への参加が期待される。

研究者紹介(H22年度・H23年度)

☆プロジェクトリーダー 藤原 賢二 (総合理工学部・教授)

三好 清貴 (総合理工学部・准教授)
武藤 哲也 (総合理工学部・准教授)
西郡 至誠 (総合科学研究支援センター・准教授)

連絡先

藤原 賢二  TEL 0852-32-6393   E-mail fujiwara @riko.shimane-u.ac.jp
*迷惑メール防止のため、@を全角で表記しています。