「隠岐の秋ブドウ」の漁況予測のための自然生態調査

概要

 山陰地方、とくに島根県隠岐島漁業において主要漁獲対象種であるケンサキイカ(通称「白いか」)を、安定的かつ持続的に漁獲資源として確保していくためには、この海域における生殖、生態、漁況について、基本的知見の収集とその分析がいま必要です。 「白いか」は、初夏に来遊する「ケンサキイカ」と秋以降に来遊する「ブドウイカ」が知られていますが、両者のゲノムに違いはなく、現在では分類学上、ケンサキイカ:Photololigo edulisという学名で同一種として扱われています。夏群のケンサキイカは九州地方を回遊するため、山陰における漁獲量は年変動が大きいです。一方、秋群のケンサキイカ(ブドウイカ)は、別ルートを回遊すると予想されており、漁獲圧が少なく、その結果、山陰の白いかにおいて漁獲量の比重が高く、重要水産資源となっています。従ってこの秋群の資源生態を正確に掴むことが、長中期的な漁況予測を可能とし、山陰白いかの市場への安定供給、ひいてはブランド化を進める基盤となります。

  

研究内容

 本研究プロジェクトでは、次のとおり研究を推進します。

  1. 2群のミトコンドリアゲノムのハプロタイプ頻度を比較し、隠蔽種の可能性を検証します。
  2. 季節変遷期に混在する2群の正確な漁獲比を求め、その漁場における秋群到来の時期を推定します。
  3. 山陰地方各地の漁場においても到来時期と集団中の遺伝的偏りを調べ、日本海水域におけるブドウイカの回遊ルートを推定し、その情報を水産業振興に役立てると共に、繁殖生態学やマリンバイオロジーといった基礎科学分野の発展にも貢献します。

研究者紹介(H27年度)

  プロジェクトリーダー 広橋 教貴(生物資源科学部・准教授)  
  尾崎 浩一(生物資源科学部・教授)  初見 真知子 (生物資源科学部・准教授)

連絡先

  広橋 教貴   TEL  08512-2-1814  E-mail  hiro@life.shimane-u.ac.jp 
*迷惑メール防止のため、@を全角で表記しています。