コホート研究プラットフォームを活用した高齢者難治性疾患予防研究

概要

 島根県は日本でも有数の高齢県であり、今後さらに高齢化が進むことから認知症の予防は最重要課題になると予想されます。認知機能低下を予防することができれば、本人、家族はもちろん社会的な負担の軽減に繋がることが期待されます。本研究は、高齢化先進地域を多く有する島根県に立地する大学の特性を活かし、先進的な研究と地域貢献を両立させようとするプロジェクトです。そして医学部や人文社会科学系の学生参加による体験教育を実施し、将来的には国際的な共同研究を促進し、「10万人コホート」のようなナショナルプロジェクトへの参画も視野に入れています。

研究内容

 我々は、研究プロジェクト「地域住民、自治体との連携による生活習慣病の予知予防研究の展開」の中で住民コホートを確立し、疾病予知予防研究拠点を形成してきました。さらにいくつかの研究グループが長年にわたる独自の研究コホートをすでに確立し、医学・医療分野で優れた成果を上げてきています。今回まず、島根県下に展開している4つのコホート集団を統合することで新たな総合的疫学研究基盤を形成し、さらに自治体と共同して追跡調査を行うことで縦断的なコホート研究の基礎を確立します(写真1)。  
 kohoto1.jpg     kohoto2.jpg
  
            

 我が国でも最も高齢化が進んだ島根県において、認知症医療は最重要課題の一つであります。そこで今回のコホートを使って、認知症に関する新たな診断・解析方法を開発します。特に検診など多数の対象者に使用可能な、迅速で簡便な認知機能評価装置の開発を予定しています(写真2)。この装置を用いて、栄養やソーシャルキャピタルと認知機能の関連について検討を行います。また、酸化ストレスマーカーなど認知症疾患に関係するバイオマーカーの迅速な測定システムの開発を行います。さらに、認知症の原因物質であるアミロイドの脳内沈着を早期に検出できる造影剤の開発による認知症早期診断技術の開発を目指します(写真3)。  

            

 認知症以外に、骨・関節疾患、慢性肺閉塞性疾患、緑内障、顎骨壊死などの高齢者での難治性疾患についても、コホート研究から遺伝的素因、食事素因、社会的素因などとの相互関係を明らかにし情報発信を行います。
また、健康体操などによる認知症予防プログラムの実践と検証、あるいは地域包括ケアシステムの構築を通じて、認知症予防を含めた住民の健康維持に貢献する予定です。

研究成果の活用

 本研究はこれまでに培ったコホート研究の実績をもとに、認知症予防のための体制を自治体と協力して構築するともに、認知機能低下を初めとする高齢者疾患に関する学際的な学術研究を推進することを目指しており、高齢化先進地域での医療に大いに貢献すると共に、その成果を国際的に発信していきます。
 そして健康調査に医学部医学科、看護学科学生や人文社会科学系学生が参加し、得られたデータの解析を体験することで「現場体験」に基づく人材育成のための教育にも貢献することが期待できます。

研究者紹介(平成25年)

☆プロジェクトリーダー 山口 修平(医学部・教授)

  ●コホート研究グループ
    濱野 強(戦略的研究推進センター・講師)   磯村 実(医学部・講師)
    田邊 一明(医学部・教授)             山崎 雅之(医学部・助教)
    伊藤 勝久(生物資源科学部・教授)       片岡 佳美(法文学部・准教授) 

  ●難治性疾患研究グループ
    小野田 慶一(医学部・学内講師)        塩田 由利(医学部・助教)
    中村 守彦(産学連携センター・教授)      西垣内 寛(総合理工学研究科・教授)
    片倉 賢紀(医学部・助教)              内尾 祐司(医学部・教授)
    矢野 彰三(医学部・准教授)            石橋 浩晃(医学部・准教授)           
    濱口 俊一(医学部・助教)              谷戸 正樹(医学部・講師) 
    新原 寛之(医学部・講師)             丸山 理留敬(医学部・教授)
    福間 美紀(医学部・講師)             杉崎 千洋(法文学部・教授)
    加川 充浩(法文学部・准教授)

平成23年度  ■平成24年度


連絡先

  山口 修平  TEL  0853-20-2195   E-mail  yamagu3n@med.shimane-u.ac.jp 
                             *迷惑メール防止のため、@を全角で表記しています。